ニャオニクスな日々

夫婦でポケカやっています

ポケモン サン・ムーンシリーズを振り返る ①アニポケ編 ~ジョーカーとしてのグズマ~

ついに今月ポケモンの完全新作「ソード・シールド」が出ます。アニメも最終回を迎え、カードも今月末からレギュレーションが変わります。そこで唐突ですがサン・ムーンシリーズを振り返る記事を何回かに分けて書きます。書き始めた理由は記事の末尾にありますので興味ある方はそこでお読み下さい。

 

1回目はアニポケについてです。神作画と呼ばれたXYZから一転、かなりコミカルなタッチとなり、昔からのファンからは賛否両論あったようです。中身もバトルバトルした感じというより日常系の要素が入ってましたしね。開始当時隆盛を極めていた妖怪ウォッチへの対抗意識が前面に出ていて、分かりやすすぎるだろと思った記憶はあるんですが、見始めたらなんだかんだで面白く、妻と毎週楽しみに観ていました。

 

で、個人的に一番好きなのはグズマのエピソードです。グズマ(および彼の率いるスカル団)というのは(アニポケに限らず)ポケモンのストーリーにおいてかなり特異なキャラクターです。ロケット団から始まるポケモンの「悪役」は、そのほとんどが「世界征服」とか「世界を海(陸)に!」とか何らかの壮大な目的を持っており、その目的達成のための手段として悪事を働く、というのがお決まりでした。

 

スカル団を除いては。

 

サン・ムーンシリーズの悪役であるスカル団は、それまでの悪役組織と異なり大層な目的を持っていません。そのトップたるグズマも、「破壊という言葉が人の形をして歩いている(本人談)」という言葉通り、彼の行う破壊行為は手段ではなくそれ自体が目的となっています。目的なき破壊。破壊のための破壊。一般的にそれは「狂気」と呼ばれる類いの行為です。

 

映画『ダークナイト』において、ジョーカーは自らを正義と呼ぶバットマンをあざ笑い、「お前もこっち側の人間だ。俺とお前、何が違う?」とささやきます。バットマンはご存知正義の味方ですが、ゴッサム・シティにおいても一応彼の存在は「非合法」であり、例え相手がギャングであろうが、「私刑」を加えることは法に反する行為です。ゆえに、世界を「理性/狂気」「正義/悪」で分けた時、ゴッサム・シティの警察機関は「理性・正義」に当たります。しかしバットマンは? 市民から後ろ指をさされてなお何故闘うのか。手段としての正義ではなく、それ自体が目的化しているのでは? そしてそれは、まさに悪のための悪をなす「狂気」ジョーカーと同じなのでは? そうした問いをジョーカーから突きつけられます。

 

グズマは言ってみればポケモンにおける「ジョーカー」的存在であり、これまでのポケモンシリーズの悪役にない立ち位置だったと言えます(アニポケのロケット団が「正義の悪」を標榜したのとは実に対照的です)。

 

アニポケにおけるグズマの面白いところは、彼がククイの主催するアローラ初のポケモンリーグに選手として参加するところです(一応、ゲームの方も防衛戦には出てくるのでそういうストーリーがあったという解釈もできますがいったん措きます)。てっきりポケモンリーグを外から妨害するのかと思いきや、アニポケでは選手として参加し、優勝することでその実効性を無意味にさせる。これは大きな意味合いがあります。

 

ゲームのグズマが行う破壊的行為はそれ自体が目的であり、あるとすれば組織拡大のアピール程度でした。そしてそれは現代の言葉で言うならばテロリストに近い存在です。テロとは、社会の構造をその外側から、つまり非合法的な手段で持って変える行為です。ただ変えると言っても変える方向性を示せるわけではなく、単に現状に対してNOを突きつけるだけで、これもまた目的なき破壊行為、破壊のための破壊といっていいでしょう。

 

ところがアニポケのグズマはテロリストに甘んじませんでした。ポケモンリーグを単に「ぶっ壊す」のではなく、選手として参加することで「形式的な正しさ」を身にまとい、破壊しようとします。外から非合法的な手段で世界を変えるのではなく、中から合法的な手段で世界を変えることを選んだのです。

 

一般的に、世界を変える手段としての「外から非合法的に/中から合法的に」というのは対立する概念です。少し古いですが、アニメ『コードギアス』でルルーシュとスザクの対立もまさにこの構図でした。不正義のまかり通る世界を変えたいとき、中から合法的に変えるには時間がかかる。外から非合法的に変えるのは速く見えるが変えた側の正統性がない。しかし本来「外から非合法的に」側だったグズマポケモンバトルを経由することで「中から合法的に」変える側へと変化しました。あくまでもヒールであることは貫きながら、本来対立するこの概念を移動したのは、非常に興味深いストーリーでした。ポケモンバトルが破壊行為にも真っ当な競技にも使われているからこそ可能な流れであり、かつゲームとの差も生まれ、アニポケならではのストーリーでした。

 

そんなわけで「早口で喋るオタク」感を文字で感じ取れる程度に高速で語り散らかしたわけですが、なぜ唐突にこんなことを始めたかのか。このブログは一応夫婦でポケカをやっているプレイヤーのブログとなっていますのでそれっぽいことを書くと、ポケモンのサン・ムーンが発売されたのが2016年の11月、僕ら夫婦が結婚式を挙げたのが2016年11月と、同時期でした。若干結婚式のほうが後だったので、結婚式の準備をしながらもう遊べるはずのサン・ムーンを我慢し続ける謎プレイを2人でかました記憶があります。懐かしいね……。

 

要は結婚してから夫婦2人でのポケモンの思い出はサン・ムーンシリーズが中心だったので、思い入れが強くてうっかり語っちゃうよ! ということですね。理由になってないっちゃなってないんですが、そんなもんな気がします。しかしこれは一応ポケカのブログなので、次はサン・ムーンシリーズのカードを振り返りたいと思います。